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講談社やら集英社やらのライトノベル作家みみとミミの物書きブログ
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 バットのグリップを握る手が、少し湿っていた。
 それを制服のシャツの腹でぬぐい、軽くバットを振る。伸びをして、あくびをひとつ。さりげなく。わざとらしく。不敵を装って。
「あーもう、余裕面腹立つ!」
 ばしん、とロージンを地面にたたきつけるひなた。ガシガシとマウンドを荒っぽく直し――むしろ荒れてしまったそこをもう一度均す。
 内心、冷や汗ものだった。
 気づかれてはいないだろうか。フランシアのときは『狙って』ライトに流し打ったが、ひかげのときは『差し込まれて』ライトに流れたということに。
 百三十キロ台前半まではありえると思った。
 優しく触れねば折れそうな印象がある彼女にそれほどの速球が出せるとは思いにくかったけれど、それでも可能性としては考慮していた。だから、『ギリギリ』打てたのだ。仮に、もう若干コースや高低が厳しかったら、球に重みがあったら話は変わっていたに違いない。
 ゆえに、『フランシアの打球の落下地点を超えた』ことは笑い話にしかならない。
 今度の相手は、その双子の姉。
 油断はしない。次の速球は――ずばり、百四十キロ!

 女子だからありえないなんて、考えちゃダメだ。
 一瞬でもその疑念を持てば、スイングは鈍る。球を捉えきれない。負けてしまう。
 百四十キロの球をセンター返しするイメージを持って――
「……ふっ!」
 ぶぉん、と一振り。
 イメージの中のひなたの球はきれいにセンター前にはじき返されていた。
「さあて、そろそろいいか?」
「待ちくたびれたわよ。さっさと構えなさい」
「いつでも来ぉい!」
 プレートに、足が付いた。
 ひなたの投球フォームは、ひかげのものとまったくといっていいほど同じ、本格派のオーバースロー。体いっぱいをフルに使って投げ込む力強い動き。それにもかかわらず、腕の出は遅く手の返しをじりじりと待たされる。
 だが、戸惑わない。始動は早く。早く。バットを引き、肩を入れ、腰にエネルギーを蓄え、タイミングを微調整しながら、微調整しながら、調整――


「はぁっ!?」


 ――それは、ありえない球だった。

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