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講談社やら集英社やらのライトノベル作家みみとミミの物書きブログ
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「きゃあっ! レフトぉ!」
 白球が舞う。
「ま、待って待って待ってぇ!」
 選手が走る。
「は、入ってたぁ!」
 ギリギリからのスライディングキャッチで、偶然グローブに飛び込んでいたことを喜ぶ。
 いずれの声も高く、ともすればここがグラウンドであることを忘れてしまいそうになる。
「わー、すごいですー♪」
 みゆきは手を叩いた。
「あのセンターはウチの中で一番足が速いのよ。見ての通り、男子にだって負けない守備範囲でしょう?」
 ひなたはどうだ、といわんばかりに胸を張った。
 投手はセットポジションに立ち、左下手から次の球を放つ。
 内角に食い込む球に対応しきれず、打者はセカンド後方へのポップフライを打ち上げてしまう。
「おっけー、セカンドぉー!」
 下がるセカンドの後ろをカバーすべくライトとセンターとショートとファーストが回り込み、しかし落球はなくセカンドは優々とフライを処理した。
「わー、すごいですー♪」
 みゆきの評価はあんまり変わって見えないのだが、とりあえず放置。
「このセカンドは捕球から送球姿勢に入るまでがかなり早いわ。難しい姿勢のまますぐにベースへボールを寄せられるのは、男子のレギュラー並だと思うの」
 それはいいんだが、
「……これはどういう状況を想定しての守備練習なんだ?」
「え?」
 なるほど……。
「いや、いいよ。気にするな」
「ちょ、ちょっと何よ。気になるじゃない。教えなさいよ!」
 いや、だって……その質問で返ってきた答えが「え?」の時点で、説明しても無駄だし。
「いいから教えなさい。あんた……まさか、あたしの肌を見ておいて、ぼけーっと練習眺めるだけで許してもらえる打なんて思ってるんじゃないでしょうね?」
「わかったわかった、そうにらむな」
 めんどくさいなぁ、とため息をついて、
「直前の守備。セカンドフライに四人の野手が集まっていたが、アレはなんだ?」
「カバーでしょ?」
「……お前は、ノーアウト満塁でもああいうカバーリングする内外野があったとして、疑問に思わないのか?」
 そこまで聞いて、ひなたもようやく気が付いたのか、手を打った。
「なるほどね、そういわれてみれば状況がよく分からないわ」
「というか、守備が終わってないのにマウンドで仁王立ちしたままのピッチャーはなんなんだ? ファーストまでセカンドフライのカバーに回って、ファーストがガラガラじゃないか。素人か、あのアレは?」
 状況が分からない、というレベルの話ではない。
 基本的なカバーリングの仕方さえ分かっていないのだ。
 その上、
「素人とは――聞き捨てなりませんわね?」
 くだんのお山の大将が、悪びれることもなくやってくるし。
「わたくし、投手たるものは投球以外で無駄な体力を使うべきとは思いませんの。しょせん、練習ですし」
 縦ロールだった。
 金髪が豪奢に輝く長身の美人。
 日本人らしい顔立ちに似合わぬ均整の取れたすらりとした体つき。
 せいぜいひとつ年上までだというのに、『女性』といいたくなる雰囲気をまとっていた。
 が――
「おう、素人ピッチャー。すまんな、聞こえちまったか素人ピッチャー。悪気があっていったわけじゃないんだ、許せ素人ピッチャー」
 びき、とそのピッチャーの顔がこわばる。
「い、いってくれるじゃありませんの……」
「さて、何のことやら」
「いいですわ、勝負なさい!」
 ほー。
「ま、同じ暇つぶしするなら、身体を動かしてた方が好きだし……俺は構わないぜ?」
「暇つぶしとは大きなことをいってくれますわね……」
「大きなことを言ったつもりはないがね」
「いいですわ! そこまでいうからには、賭けに乗ってもらえますわね!?」
 ほう。
「おもしろい、乗った!」
「条件さえ聞かずにとは……なめられたものですわね」
「何、ただめんどくさがりなだけだ。気にしてくれるな」
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