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講談社やら集英社やらのライトノベル作家みみとミミの物書きブログ
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 部屋の中からの声にも止まらず、みゆきはドアを開け放った。

 白。

 肌色が覗く、桃色の世界に、白色の下着が映った。
 下着。
 ブリーフというオチではない。
 女性モノの下着だ。
 筋骨粒々で特異な趣味をしたゴツイ野球部員が着ているわけでもない。
「き……きっ……」
 マネージャーだろうか、生徒らしき女子。
 胸部は豊満でありながら腹部に贅肉はなく、実に健康的に絞れている。
 特筆すべきは下半身だ。
 腿は太く筋肉量が見受けられ、そのくせ足首は柔軟さを残したまま無駄のない細さを獲得している。
 なるほど、マネージャーもしっかりと体力づくりをしているんですねぐはぁっ
「きゃああああああああああああああああ」
「ちょ、ま、待て! グローブはともかく、ヘルメットを投げんな!」
「ダメですよぉ、島谷さん。いくら可愛いからってひなたちゃんの着替えを覗いちゃあ?」
「えええ、俺のせい!?」
 君が開けたんでしょ、ドア!
「あ、頭を一撃すれば、記憶が飛ぶはず……」
「いやいやいやいやいや、バット持つな! 素振りするな! 近づいてくんなー!」
 ひいぃ、乱雑にタオルを巻きつけただけの半裸娘怖いぃいいい。
「お、お姉ちゃん。まず、ちゃんと服を着ようよ……」
 おお、救世……主が……
「暴力女が増えたっ!?」
 振り向いた先にいたのは、ひなたと呼ばれた暴力女と同じ顔。
 ただし、こちらはきちんとユニフォームを着ていた。
「誰が暴力女かー!」
「お前だお前! バット振り回しながら言うセリフじゃねえぞ!」
 しかも、体重の乗ったいいスイングしてるし! 当たったら死ぬぞ、冗談抜きで!
「お、お姉ちゃんってばぁ……」
 と、そこでみゆきがぱんぱん、と手をたたいた。
「はいはーい、そこまでそこまでー、同じ部の仲間同士でけんかしちゃいけません。みゆき先生に注目ですよー♪」
「せ、先生ぃ!?」
「そうですよー、言いませんでしたっけ?」
 いや、可愛らしく首を傾げられても。
「天武高校女子硬式野球部の顧問、梅野みゆき。二十五歳独身なのです♪」

 

「……は?」

 

 すごく時間が止まった。
「若く見えるっていわれますけど、みゆき先生は二十五歳。これでも教員免許持ってるのでーす♪」
 それも詐欺っぽい話だが、
「違う。そっちじゃなくて、その前」
「顧問?」
 ちょん、と唇に人差し指を当てるみゆき。
「そのさらに前」
「天武高校女子硬式野球部?」
「そう、それ! なんですか、その――『女子』硬式野球部ってのは!?」
 すごく嫌な予感がした。
 普通に考えれば、『同じ部』というのは男子硬式野球部と女子硬式野球部も同じ野球部だから、という意味合いのはずだ。
 が、何やら背中をなめられるような感覚がぞわぞわ、とした。
「それはもちろん、島谷さんが入る部の顧問ですから、挨拶は必要だと思いました♪」
 落ち着いて見渡せば、部室にいたのは女子、女子、女子。
 ユニフォームを着た女子の集団。
「皆さん、行きますよー。さん、はいっ♪」
 みゆきが音頭をとり、
『ようこそ、天武高校女子硬式野球部へ』
 と、唱和。
 ばさっと音を立てて、横断幕が垂れ下がる。
 そこには『祝、入部! 天武高校女子硬式野球部』の文字。
「な、な……なんじゃこりゃああああああああああああ!?」
 叫ばずにはいられなかった。
「何よ? この程度の歓迎じゃ不満なわけ?」
 合間に着込んだのか、ユニフォーム姿の暴力女がいた。
「ああいや、暴力女。そういうわけじゃなくて……」
「暴力女いうな! あたしは、相模ひなたっていう立派な名前があるんだから、そう呼びなさい!」
「あー、じゃあ相模」
「それだとひかげと紛らわしいから、ひなたって呼んでちょうだい。敬称は様でも姫でもお好きなように」
「誰が付けるか、んなもん!」
 ひかげ、というのはおそらく先ほどのひなたと同じ顔をした女子のことだろう。姉妹、ってことか。
「で、これはどういうことなんだ?」
「何がよ?」
 何がも何も。
「なんで俺は、『女子』野球部に歓迎されてるんだ、って話だ!」
「はあ? そりゃ、あんたが入るつもりで転校してきたからでしょ?」
「何をどうとち狂ったら、俺が『女子』野球部に入るつもりになるんだよ!?」
 嫌な予感が次々と確証に変わっていく。
「ま、まあいいや……。それよりも、俺は野球部に呼ばれてるんだから、こんなところにいる暇はないんだ」
「あれ? 島谷さんは、男子野球部に『も』呼ばれてるんですかー?」
 みゆきがなんか言った。
 とっても聞きたくないんだけれども、確認。
「……『も』?」
「はい、今日この時間を指定したのは、女子野球部ですよ? 島谷さんを招聘したのももちろんここです♪」


「……すみません、この手紙の差出人はどなたかご存知ですか?」
 招聘された手紙を取り出す。
「当然、顧問のみゆき先生が書きましたよー。天武高校の硬式野球部です♪」
 つまり、
 俺は
 甲子園どころか
 公式戦にすら出られない
 女子野球部に呼ばれて
 転校しちゃったんですか?
「うわあああああああああああああああああああああああああ」

 お先、


 真っ暗。
>>>
 大会参加者資格規定、第五条三項

 転入学生は、転入学した日より満1ヵ年を経過したもの。ただし満1ヵ年を経なくても、学区制の変更、学校の統廃合または一家転任などにより、止むを得ず転入学したと認められるもので、本連盟の承認を得たものはこの限りではない。
 なお転入学生であっても、前在籍校で野球部員として当該都道府県高等学校野球連盟に部員登録されていなかったものは、転入学した日から参加資格が認められる。
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