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講談社やら集英社やらのライトノベル作家みみとミミの物書きブログ
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 一球目、二球目ともにスローボール。
 コントロールこそ平凡だが、ひかげと寸分たがわぬフォームから繰り出されるあまりの速度差。その速度差こそがひなたの最大にして、他のピッチャーが持てぬほどの強力な武器なのだろう。
 球速80キロ。これはプレートからホームベースまでの18.44メートルを約0.83秒で通過する速さだ。これが球速140キロだと0.48秒。実に0.35秒もの差がある。
 野球を数字で考えたことがなければ、この0.35秒という時間を大きいものと捉えることは難しいが、これはすさまじい大きさだ。
 俺のバットのヘッドスピードは、こちらもおよそ時速140キロ程度。そして、バットの長さは最大でも1.067メートルと定められている。
 仮に、支点から0.8メートルの位置にボールが飛び込んできたとすると許される角度はおよそ前後50度ずつ。これを解くと、バットがボールを捉えることができる時間はわずかに0.0479秒だけ。
 0.35秒のズレがいかに大きいかわかるというもの。
 だから、三球目は速球を待ちながらも、長打は捨てる。
 ただただミートに徹して、速球をセンター前にはじき返すことだけにしぼる。遅い球であったならば――
「――ちっ!」
 放られたのは、さらに遅い七十キロほどの球。ベースを通過するまでにかかる時間はなんと0.95秒。だが、それでも――

 ――カットしてみせる。

 読みの外れた球を『なかったこと』にする技術。それがカット。ファールに逃げる能力だ。
 一流と呼ばれる打者はいくつもパターンがある。しかし、いずれも高いバットコントロール技術を持ち、得意な球で勝負することができる。
「俺は、お前の――」

 ――速い球を打ちてぇんだよ!

 ボールは、緩やかに軌道を変え、スイングの下をくぐって、ミットに収まった。
 よくコントロールされた、スローカーブだった。

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