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講談社やら集英社やらのライトノベル作家みみとミミの物書きブログ
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 第一章『すべての終わりとなる始まり』

 拝啓、島谷一球様。
 天武高校の硬式野球部一同はあなたを招聘したく思い、お手紙差し上げました。
 それほど大きな優遇を図ることはできませんが、チームのために力をお貸しいただければ幸いです。

 一言で表すなら、変な手紙だった。
 確かに、高校からの招聘は何通もあった。
 だが、それらは多少の差こそあれ形式に則った体裁であり、間違ってもこんな本文が三行ほどしかないものではなかった。
「……ま、それが今の俺の評価ってことか」
 天武高校。
 東東京に敷居を構える共学制の私立。
 ほんの七年前に生まれた高校にもかかわらず、一昨年夏季予選でのベスト十六に続き、去年夏季予選でもベスト十六の健闘。
 秋に弱いといわれるが、学校側からのバックアップは強力であり甲子園は射程県内である。
 他、つらつらと美辞が並ぶ天武高校発行のパンフレットをぼんやりと眺める。
「はぁ……」
 正直、この高校では甲子園は難しいだろう。
 俺なりの考え方だが、高校にはいくつかランクがある。
 十年に五回は名前を見せる甲子園常連高校。十年に三回の甲子園射程圏高校。十年に一回の予選上位高校。二十年に一回の甲子園経験高校。予選落ち高校。
 この格差は絶対であり、やすやすとは覆らない。本気で甲子園を目指すのであれば、せめて射程圏に納めている高校でなくてはならない――が、天武高校はよく見積もっても予選上位どまりだ。
 高校野球部のスカウトが糾弾されて数年。
 しかし、格差はいまだに残っていた。
 極端な優遇は否定されたものの、声をかけること自体は大きく否定されていない。
 ならば、上位選手は自然と有力高校に集まり、『いつもどおりに』甲子園へと導くのも道理といえるだろう。
 一年を棒に振ってまで天武高校に来たことは、果たしていい判断だったのか。
「今更考えても仕方ないか……」
 もうすでに、一歩を踏み出してしまったのだ。
 まだ『着られている』といった風にツッパる天武高校指定のワイシャツをなでつける。
 ――天武高等学校
 正門に掲げられた校名を軽くたたいて、俺は進む。
「よぉし! やるぞぉ!」
 校舎の大時計は午前六時を指していた。
 あくびをかみ殺し、向かう先は部室。
 こんな早くに朝練もないだろうが、この時間に、といわれたのだ。部員たちに紹介する場所を設けてくれたのかもしれない。
「へぇ……」
 下見すら――むしろどれほど設備が整っていないか怖くて――していなかったが、グラウンドに併設された部室は創造していたよりよほど立派だった。
 運動部室棟かと思いきや、『野球部室棟』とはなかなかな出来といえよう。
 この分だと、独立した筋トレ室も期待できそうだな――

 がしょん

「ん?」
 開かない。

 がぎがぎ

 開かない。
 看板を確かめる。
 硬式野球部。間違いない。
 はて、合言葉でもあったかな?
「あ、もう来てらしたんですか♪」
 子供だった。
 あ、いや、サイズの合う天武高校の名前が入ったユニフォームを着ているところからして、ただの――相当に――小柄な女子マネだろう。
 しかし、それにしても小さい……。
 百四十? へたするとそれ未満か?
「初めまして、わたし、梅野みゆきです。気軽~にみゆきちゃんって呼んでくださいね♪」
「え、えっと、俺は――」
「あ、自己紹介はみんな待ってると思いますから、どうぞこちらへ♪」
「わかった」
 身長と同じく小さな手に、部室の入り口の横を通り奥へと引かれる。
 すると、表からは見えない空間に、こじんまりとした離れ部室――というのだろうか――があった。
 創立七年のはずなのに、どこか古ぼけて見える石造りの部室。
 ごちゃごちゃと部屋の前に積み上げられたほつれたボールや掃除用具。
 なんで、こんな物置部屋で……?
「みんなー、島谷さんが来たのでご挨拶してくださーい♪」
「え、ちょ!? 待っ――」

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